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団扇を持つ若い女
1879-1880年頃
クラーク美術館
©Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
当時流行の英国風タータンチェックの旅行着を着て、愛らしい顔を向けているのは、コメディー=フランセーズの人気女優であったジャンヌ・サマリー(1857-1890)。左画面の複雑な構成と、右画面の緑の壁の縞模様が背景を二分し、この左右の対比が、くっきりした顔立ちのジャンヌの魅力を際立たせています。
1878年のパリ万国博覧会の開催により、ジャポニスム(日本趣味)への熱狂は当時、頂点に達していました。本作品にも、日本の団扇や、当時やはり流行の花であった日本の菊を思わせる花々が描かれています。

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アンリオ夫人
1876年頃
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
Gift of the Adele R. Levy Fund, Inc.,
©The Board of Trustees, National Gallery of Art, Washington.
1879年のサロンで成功を収めたルノワールのもとには、肖像画の注文が相次ぎますが、それ以前の肖像画のモデルの多くは、親しい友人やごく一部の蒐集家たちに限られていました。
本作品のモデルは、当時かけだしの舞台女優であったアンリエット・アンリオ(1857-1944)。身体をぴったりと包む柔らかな感触のドレスや、大きな襟あきに飾られた花、首に巻かれたチョーカーは、当時流行の夜会服の装いです。素早い筆致でとらえられた人物が輝く色彩に溶け込み、印象派的な特徴を端的に示しています。
1870年代中頃のルノワールのお気に入りのモデルであったアンリエットは、少なくとも11点の油彩画に登場しますが、本作品は彼女を描いた最後の作品で、アンリエット自身が唯一所有していた肖像画です。

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ブージヴァルのダンス
1883年
ボストン美術館
Picture Fund, 37.375. Photograph ©2009 Museum of Fine Arts, Boston
ルノワールは1870年代から、《ムーラン・ド・ラ・ガレット》(1876年、オルセー美術館)をはじめ、パリのダンス場を主題とした作品を描いています。セーヌ河上流の行楽地ブージヴァルを舞台とする本作品は、同時期に描かれた《田舎のダンス》(1882-1883年、オルセー美術館)と《都会のダンス》(1883年、オルセー美術館)とともに、踊る一組の男女をテーマとした作品です。
男性のモデルはルノワールの友人ポール・ロート。女性のモデルは、後に画家モーリス・ユトリロ(1883-1955)の母となり、画家シュザンヌ・ヴァラドンとしても知られるようになる、当時18歳のマリー=クレマンティーヌ・ヴァラドン(1865-1938)です。
控えめな赤い縁飾りのついた白いドレスが帽子の赤色を引き立て、黄色いベルトは男性の靴の色に呼応しています。足元に捨てられたスミレの花束とマッチが、行楽地の開放感と危うい雰囲気を暗示しているかのようです。

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水のなかの裸婦
1888年
ポーラ美術館
あらわな胸と腹を手で隠す、古代ギリシア彫刻の女神像に由来する「恥じらいのポーズ」をとる裸婦像です。脚のほとんどが水のなかに隠れているため、トルソ(脚のない胴体だけの彫像)のようにも見えます。
一般的に、こうした古典的な身体表現には硬さが見られますが、ここでは輪郭線は柔らかく描かれ、背景との調和がはかられています。また、背景の鮮やかな色彩を人体の陰影部に用いることにより、まるで両者が溶け合うような効果が生まれています。

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縫い物をする若い女
1879年
シカゴ美術館
Mr. and Mrs. Lewis Larned Coburn Memorial Collection, 1933.452.
Photography ©The Art Institute of Chicago.
《テレーズ・ベラール》、《本を持つ少年》(いずれも本展出品作)と同様、ヴァルジュモンに始めて滞在した際に描かれた作品です。ただし、モデルの正体が明らかでない本作品では、注文を受けて描いた肖像画とは異なり、ルノワールの視点がとらえた日常の一場面が切り取られています。
室内で針仕事にいそしむ女性の姿が描かれていますが、傍らの花と花瓶は、背景を飾るというよりはむしろ、女性と同等の存在感を与えられています。華やかに咲き誇る花や柔らかな女性の美しさには、18世紀ロココの絵画に対するルノワールの傾倒が見られます、ルノワールはそれを当時の平穏な日常風景のなかにさりげなく再現しています。

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イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)
大阪展のみ出展
1880年
E.G.ビューレー・コレクション
ユダヤ人の銀行家のルイ・カーン・ダンヴェール伯爵(1837-1922)の長女イレーヌ(1872-1963)の肖像画です。カーン・ダンヴェール伯爵は、ルノワールに肖像画制作を注文したユダヤ人のなかで最も裕福な人物の一人です。
本作品は、1880年の夏にパリのバッサーノ通りのカーン・ダンヴェール家の庭で2回ポーズをとってから描かれました。8歳のイレーヌは、薄い青のドレスをまとい、肩には赤茶色の美しい髪が覆うようにかかっています。切りそろえられた前髪と後ろでリボンでまとめる髪型は、当時流行していた少女の髪型でした。庭の一隅を表現したと思われる後ろの深い緑の茂みが、イレーヌのあどけない顔を引き立てています。まつげなどの細部は入念に仕上られており、清らかな美しさが見事に表現されています。

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レースの帽子の少女
1891年
ポーラ美術館(ポーラ・コレクション)
仕立屋の父とお針子の母をもつルノワールにとって、女性の衣装は幼い頃から身近なものでした。そのためか、ルノワールは女性を描く際に衣装にも注意を払い、その質感を巧みに描き分けています。とくに、形や素材がさまざまで、花などの装飾も付いた帽子は、格好のモティーフであったに違いありません。
本作品では、華やかなレースの帽子が、勢いのある筆致を重ねることによって見事に描き出されています。この帽子は、おそらく絹で化粧張りしたものをレースやサテンのリボンで装飾した当時の最新のデザインで、《夏の帽子》や《野原で花を摘む娘たち》(いずれも本展出品作)にも描かれています。

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野原で花を摘む娘たち
1890年頃
ボストン美術館
Juliana Cheney Edwards Collection, 39.675.
Photograph©2009 Museum of Fine Arts, Boston
ルノワールは1890年代、帽子を被った二人の少女を繰り返し描いています。彼女たちが草原でくつろいだり、花を飾ったりしている場面は、西洋絵画の伝統である春の寓意画にも通じ、18世紀のロココ絵画に見られる牧歌的な画面を創り上げています。
しかし、二人の少女が被る帽子は、どちらも1890年頃に流行した少女用の帽子です。ルノワールは田園の風景を描きながらも、そこに最新流行の帽子を加えることによって近代性を表現しました。伝統的な絵画と同時代性を融合させるルノワールの試みにおいて、流行のファッションは重要な役割を担っていたのです。









